お人好しの悪役令嬢は悪役になりきれない
 『ルーシーさんの誘拐でただでさえ責任を感じている筈だから』と思案する中、兄は口を開く。

「レーヴェン殿下、リディアにマーキングでの転移方法を教えてあげてください。僕とリエートは先生方に状況説明と、他の生徒の対応を任せてきます」

「分かった」

 冷静さを取り戻した兄の指示に、レーヴェン殿下は素直に従った。
そして、リエート卿を連れて立ち去る兄の後ろ姿を見送り、こちらに向き直る。
『じゃあ、マーキングについて説明するね』と話を切り出す彼は、優しく丁寧に教えてくれた。
と言っても、あくまで知識面だけだけど。
殿下も、転移魔法は使えないみたいだから。
でも、非常に分かりやすかった。

 とりあえず、マーキングでの転移は多分出来ると思う。
要領はほとんどキャルキュレイトと変わらないし、最も大切な“イメージ”も問題ない。
いや、むしろ簡単かも。
だって、ルーシーさんの容姿を具体的に思い浮かべるだけだから。
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