お人好しの悪役令嬢は悪役になりきれない
 『そんなの朝飯前よ』と奮起する中、兄とリエート卿がこちらへ戻ってくる。
一応、行きと帰りにグルッと麓を回ってきたらしいが、ルーシーさんは見つからなかった模様。
『やはり、誘拐の線が高い』と痛感しながら、私達はあれこれ話し合う。
その結果────同行メンバーは、ここに居る四人で決定。
無論、レーヴェン殿下の参加はかなり渋られたが、『聖女候補の失踪は国の一大事だから、自分にも同行する権利がある』と言われ、仕方なく承諾。
当然、『危険になったらリディアと共に避難する』という約束つきだが。

 まあ、先生方にも一応話は通したし、大丈夫……かな?

 皇太子命令で押し切っていたレーヴェン殿下を思い出し、私は少し不安になる。
でも、もう後の祭りなので自分のやるべきことに集中した。
教えてもらった手順で転移魔法を発動し、私はゲートを開く。
以前と変わらず向こう側の景色は見えないものの、恐らく成功したと思われる。
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