お人好しの悪役令嬢は悪役になりきれない
ゲームオーバー《ルーシー side》
◇◆◇◆
────時は少し遡り、ニクスと別れたばかりの頃。
私はリエートに連れられるまま、山の麓を離れていた。
おかしいな……本来のシナリオに、こんな展開はない筈だけど。
あっ、もしかして────お人好しのリディアに折られまくった恋愛フラグを補填するため、世界が動いた!?
だとしたら、しっかりしないと!このチャンスを無駄にしてはいけない!
『リエートの好感度を爆上げしてやる!』と奮起し、私は軽やかな足取りで前へ進んでいく。
『誘拐未遂事件の方は時間的にまだ余裕あるし、大丈夫でしょ』と楽観的に考えながら、頬を緩めた。
やっときた乙女ゲームらしい展開に、浮き立っているのかもしれない。
今までリディアに潰されまくっていた分、余計に。
『やっぱり、この世界はヒロインを中心に回っているのよ!』と思いつつ、口を開く。
「あの、リエート……様、私────」
────貴方のことが前から、気になっていたんです。
と続ける筈だった言葉は、奥に停められた荷馬車を見て閊えた。
だって────あれは間違いなく、ヒロインを誘拐するときに使用されたものだから。
一瞬見間違いか何かかと思ったが、御者の格好まで完全一致なんて……そうそうない筈。
────時は少し遡り、ニクスと別れたばかりの頃。
私はリエートに連れられるまま、山の麓を離れていた。
おかしいな……本来のシナリオに、こんな展開はない筈だけど。
あっ、もしかして────お人好しのリディアに折られまくった恋愛フラグを補填するため、世界が動いた!?
だとしたら、しっかりしないと!このチャンスを無駄にしてはいけない!
『リエートの好感度を爆上げしてやる!』と奮起し、私は軽やかな足取りで前へ進んでいく。
『誘拐未遂事件の方は時間的にまだ余裕あるし、大丈夫でしょ』と楽観的に考えながら、頬を緩めた。
やっときた乙女ゲームらしい展開に、浮き立っているのかもしれない。
今までリディアに潰されまくっていた分、余計に。
『やっぱり、この世界はヒロインを中心に回っているのよ!』と思いつつ、口を開く。
「あの、リエート……様、私────」
────貴方のことが前から、気になっていたんです。
と続ける筈だった言葉は、奥に停められた荷馬車を見て閊えた。
だって────あれは間違いなく、ヒロインを誘拐するときに使用されたものだから。
一瞬見間違いか何かかと思ったが、御者の格好まで完全一致なんて……そうそうない筈。