お人好しの悪役令嬢は悪役になりきれない
「実行犯の男は終身刑。一応、死刑にする話も出たけど、神殿……それも聖女候補絡みで、誰かの血を流すのは不味いと判断した」

 『先を考えると、ここが落とし所だ』と言い、レーヴェン殿下は真っ直ぐに前を……いや、ルーシーさんを見つめる。
その眼差しは優しげだが、どこか凛としていた。

「この処罰に不満はあるかい?」

 『納得いかないなら、多少考慮する』と述べるレーヴェン殿下に、ルーシーさんは僅かに目を見開く。
決定事項として伝えられた筈なのに、今更変更なんてしていいのかと驚いているようだ。

「えっと……ありません。犯人達がもう二度と私の前に現れなければ、それで充分です」

 『とにかく、関わりたくないので』と主張し、ルーシーさんは賛同の意を示す。
『分かった』と答えるレーヴェン殿下に一つ頷き、彼女は席を立った。
『もう退室するのか?』と考える私達を前に、彼女は一度深呼吸する。
そして、深々と……本当に深々と頭を下げた。

「皆、改めて────助けに来てくれて、ありがとうございました。正直、もうダメだって思ってて……だから、凄く嬉しかった」

 若干涙声になりながらも、ルーシーさんは感謝の意を述べる。
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