お人好しの悪役令嬢は悪役になりきれない
「えっ?い、いや……そういう訳じゃない、けど……その……まあ、えっと────」

 しどろもどろになりながら言葉を紡ぎ、ルーシーさんは視線をさまよわせた。
かと思えば、何かを決心したかのようにこちらを見据える。
興奮のせいか、羞恥のせいか耳まで真っ赤にしつつ、顔を覗き込んできた。

「────ゆ、友情エンドの悪役令嬢ルートも悪くない……かな」

「まあ!本当ですか!」

 パンッと手を叩いて目を輝かせる私は、思わず立ち上がってしまった。
『嬉しいです!』と言ってルーシーさんの手を握り、軽く上下に振る。
────と、ここで完全に蚊帳の外状態だった男性陣が声を上げた。

「おい!待て、そこ!勝手にリディアと盛り上がるな!」

「そうだ、そうだ!除け者扱いなんて、寂しいぞ!」

「とりあえず、アクヤクレイジョーの意味を教えてもらってもいいかい?」

 兄、リエート卿、レーヴェン殿下は『自分達も仲間に入れろ』と詰め寄ってくる。
───が、前世の話なんて出来る筈もなく……戸惑っていると、ルーシーさんが急に抱きついてきた。
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