お人好しの悪役令嬢は悪役になりきれない
「呼び出したのに待たせてごめん、リディア。今後の話をしたいんだけど、いい?」

 どことなく真剣な面持ちでこちらを見据えるルーシーさんは、桜色の瞳に強い意志を宿した。
『あっ、これは真面目な話だな』と直ぐに察し、私は慌てて姿勢を正す。

「はい、もちろんです────あっ、でもその前に」

 あることに気づいて、私は人差し指を上に向けた。
その刹那、私達の頭上に半透明の物体が現れ、波紋のように広がっていく。
やがてソレは球体型になり、私達の周囲を取り囲んだ。

「結界?」

「はい。誰かに話を聞かれていたら、困りますので」

 パンッと手を叩いて今度は魔術を発動し、光の反射や屈折に干渉する。
そして、私達の姿をまるっと隠した。
恐らく、周囲には何の変哲もない普通の土手にしか見えていないだろう。
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