お人好しの悪役令嬢は悪役になりきれない
「とはいえ、シナリオを全部放置して悠々自適に暮らすことは出来ない」

「それは……何故ですか?」

 どことなく使命感のようなものをルーシーさんから感じ、私は頭を捻った。
『そうしなければならない理由でもあるのか』と思案する中、彼女はおもむろに両腕を組む。

「そもそも、どうしてここまでシナリオにこだわっていたと思う?」

「えっと……ゲームの展開を実際に体験してみたかったから、でしょうか?」

 『誰しも一度は乙女ゲームのような恋に憧れるものだし』と考え、そう答えた。
すると、ルーシーさんは一瞬だけ気まずいような……恥ずかしいような表情を浮かべる。

「まあ……正直なところ、それもある。でも、一番の理由は────」

 そこで一度言葉を切り、ルーシーさんは真剣な顔付きへ変わった。

「────このままだと、世界が滅びる(・・・・・・)からよ」
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