お人好しの悪役令嬢は悪役になりきれない
「当初の予定では、とにかくシナリオ通りに動いてゲームをクリアする筈だったの。でも────」

 ガシッと私の両肩を掴み、ルーシーさんは呆れたように溜め息を零した。

「────お人好しの貴方に悪役は無理だって、よーーーく分かったから予定変更よ」

「あっ、えっと……すみません」

 シュンと肩を落として俯く私に、ルーシーさんは小さく首を横に振る。

「まあ、いいのよ。ある意味、これが一番正しい選択かもしれないし。だって────真のラスボスとまで言わしめたリディアが、味方になったんだから」

 『まさに鬼に金棒よ』と言い、ルーシーさんは明るく笑った。
どうやら、慰めや励ましではなく本心でそう言っているらしい。

「リディアが真のラスボス……?」

「そう。基本的にゲームのリディアはエンディング前の卒業パーティーで断罪されて終わるんだけど、たま〜に魔王戦の前に現れて私達を攻撃してくるんだよね。で、どういう訳かめちゃくちゃ強いの。ぶっちゃけ、魔王以上」

 スッと真剣な表情に変わり、ルーシーさんはふと空を見上げた。
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