お人好しの悪役令嬢は悪役になりきれない
「私はいいの。だって────ヒロインはゲームでも転生者って、設定だから」

「えっ!?そうだったんですか!?」

「うん。まあ、さすがにゲームのことまでは知らないけどね」

 『ちなみに転生者って判明するのはかなり終盤』と補足し、ルーシーさんは居住まいを正す。
どうやら、少し落ち着いたらしい。

「とりあえず、ギフトの件は一旦保留で。きっと、ここであれこれ言い合っても結論(答え)は出ないだろうし」

 『時間の無駄』とキッパリ切り捨て、ルーシーさんは乱れた髪を手櫛で整えた。

「で、本題に戻るけど────私達の最終目標は魔王を倒し、世界の滅亡を防ぐこと。そのためには、貴方の力が必要なの。ギフトが一つ足りないとはいえ、リディアのスペックはかなり脅威だから。絶対、魔王戦で役に立つ」

 グッと手を握り締め、ルーシーさんは力説した。
かと思えば、少しばかり声のトーンを落とす。

「でも、無理強いはしない。冗談抜きで、危険なことだから。もし、嫌なら断ってくれて構わな……」

「────やります」

 わざわざ逃げ道を用意してくれたルーシーさんに、私は食い気味で答えた。
だって、こんな話を聞いてしまったら断るなんて出来ない。
何より、ルーシーさんに全ての責任と義務を押し付け、自分だけ逃げるような真似はしたくなかった。
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