お人好しの悪役令嬢は悪役になりきれない
「あぁ、ごめんね。別に君の発言を疑っている訳じゃないよ。ただ、皇室の歴史書にもここまで詳しい予言はなかったからちょっと疑問に思っただけ。まあ、所詮は昔の話だし、当時のことを知る人だってもう居ないからどこまで正確な記録なのか分からないけどね」

 『もしかしたら、どこかで歴史が捻じ曲がったのかも』と言い、レーヴェン殿下はそっと眉尻を下げた。

「気を悪くしたなら、謝るよ」

「い、いえ……大丈夫デス」

 ちょっとカタコトで喋るルーシーさんは、そろりと視線を逸らす。
やはり、誰かを騙すのは心苦しいようだ。
『特に今回は推し達だもんね……』と共感を示しつつ、私は心の中で手を合わせる。
嫌な役を押し付けてしまってごめんなさい、と。

「まあ、とにかくこの話は上へ伝えないとな。正直、僕達だけじゃ処理し切れない」

「えっ……?」

「だな。下手したら、人手を集めて魔王に立ち向かわなくちゃいけなくなるし」

「ちょっ……待っ……」

「という訳で、リディア嬢の参戦は一旦保留ね」

「そ、そんな……」

 ガクッと肩を落とすルーシーさんは、『もしかして、私……墓穴掘った?』と呟いた。
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