お人好しの悪役令嬢は悪役になりきれない
 一先ずお兄様の説得で参戦は認めてくれたけど、丸投げは出来ないみたい。
まあ、相手があの魔王なのだから当然と言えば当然だけど。

 『親としても、一人の大人としても心配よね』と思いつつ、私は室内を見回す。
すると、父と同じく渋い顔をする面々が目に入った。
その中には、皇帝陛下の姿もある。
というのも、この会議は皇城の一室を借りて行っているため。
事が事だけに、デスタン帝国の権力者達が顔を揃えていた。
『神殿側からは教皇聖下も来ているし……』と内心衝撃を受ける中、ルーシーさんは嫣然と顔を上げる。
円卓の中央であらゆる人達からの視線を浴びているにも拘わらず、堂々としていた。

「はい。先程も説明しましたが、魔王は敵の数に応じて自身の能力値を上昇させるアイテムを持っています。なので、大勢で挑むのはオススメしません」

「我々の軍が無様に命を散らすだけだと?」

「そうは言っていません。ただ、少数精鋭で臨んだ方が有利だと言いたいんです」

 クライン公爵のチクリとした発言にも、ルーシーさんは冷静に対応した。
< 266 / 622 >

この作品をシェア

pagetop