お人好しの悪役令嬢は悪役になりきれない
 『合理的に考えた結果です』と諭す彼女の前で、今度は────皇帝であるノクターン・ゼニス・デスタン陛下が声を上げる。

「ルーシー嬢の考えは、よく分かった。だが、その少数精鋭とやらは────絶対に君達五人じゃないと、いけないのか?もう少し人数を増やしたり……あるいはメンバーを入れ替えたりすることは出来ないのか?」

 オールバックにした短い銀髪をサラリと揺らし、ノクターン皇帝陛下は小首を傾げる。
レーヴェン殿下と同じアメジストの瞳にルーシーさんを映し出し、じっと見つめた。
まるで、彼女の一挙一動も見逃さぬよう観察するかのように。
警戒心を露わにする彼の前で、ルーシーさんはそっと目を伏せた。

「それは……正直、分かりません」

「分からない?」

「はい。私の視た未来で、魔王を倒したメンバーはこの五人だったというだけですから。それ以上のことは言えません」

 『予知から外れることには責任を取れない』と主張し、ルーシーさんは言及を避けた。
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