お人好しの悪役令嬢は悪役になりきれない
「まあ、結果的に全員無事だったんだから良かっただろ」

「……そうだな。リディアやニクスのおかげで、魔物を見事一網打尽に出来たし」

 『あれは魔王もビビっただろ』とポジティブに捉え、リエート卿は楽しげに笑った。
すっかりいつもの調子に戻った彼を他所に、ルーシーさんはポカンとしている。

「えっ……えっ?リディアも行ったの?」

「あっ、はい。転移魔法を使えるのが、私しか居なかったもので」

「あぁ、それで……なるほど……リエートは……」

 ブツブツと独り言を零し、ルーシーさんは大きな溜め息をついた。
かと思えば、呆れたような……でも、どこか嬉しそうな表情を浮かべる。

「貴方って、本当にフラグを折る天才ね」

「えっ?」

「何でもない。それより、本題へ戻りましょ」

 ヒラヒラと手を振ってクライン公爵家の話題を流し、ルーシーさんは本格的に話し合いを始める。
議題は言うまでもなく、学園内に居る四天王をどう倒すかについて。
そこでちょっと一悶着あったものの、概ねルーシーさんの言い分が通り、作戦会議は幕を下ろした。
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