お人好しの悪役令嬢は悪役になりきれない
 だって、マーキング(下準備)さえ上手くこなせば相手に気取られる心配は、ほぼないもの。
普通に尾行するより、ずっとリスクを抑えられるわ。

「そうですか……やっぱり、研究室(・・・)に行くのは生贄(・・)を捕まえてからになりそうですね」

 悔しそうに顔を歪めるルーシーさんは、『はぁ……』と深い溜め息を零す。

「────四天王アガレスを保護・強化している場所さえ分かれば、こんな回りくどい手を使わずに済むんですが……」

 『参ったな……』と零し、ルーシーさんは(かぶり)を振った。
他の三人も微妙な表情を浮かべている。
というのも、四天王の居場所を早めに割り出すため私を────生贄もとい囮にすることが決定しているため。
昨日の会議であった『一悶着』というのが、まさにソレだ。

 だって、さすがにルーシーさんには任せられないし……お兄様達はまず、生贄の候補から外れているものと思われる。
理由は言わずもがな、強すぎるから。
私も一応それなりに戦えるけど、矢面に立つことがあまりないため実力を軽く見られている可能性が高かった。
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