お人好しの悪役令嬢は悪役になりきれない
「それは賛同しかねます。危険だと分かっていながら、傍観するのはもう御免ですから。何より、本来の未来に沿って行動するとなると時間を要してしまいます。その間に魔王討伐の件を知られてしまったら、全て水の泡です」

 『人の口に戸は立てられない』という諺があるように、どこから話が漏れるか分からない。
あの会議に参加してくれた方々を信用していない訳じゃないけど、やはり早期解決が望ましい。

 『魔王に何か手を打たれる前に』と逸る気持ちを押さえ、私は小さく笑う。

「大丈夫です。必ず無事に帰ってきますから。私の魔法の威力は、お兄様もご存知でしょう?」

「それに、俺が教え込んだ体術もあるし!不意討ちさえなければ、大丈夫だ!」

 『戦闘経験は浅いが、ゴリ押しでいける!』と太鼓判を押し、リエート卿はグッと親指を立てた。
敢えて楽観的な態度を見せる彼に、兄は呆れたような表情を浮かべる。
『この筋肉バカが』と毒づきながらリエート卿の足を蹴飛ばし、一歩前へ出た。
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