お人好しの悪役令嬢は悪役になりきれない
『接触数分で色々おかしくなってきた……』と苦悩し、私はパチパチと瞬きを繰り返す。
一瞬、部屋に仕掛けでもあるのかと疑うが……至って普通の応接室である。
『ターゲットからも特に悪意は感じないし……』と戸惑う中、相手は
「お願いします、リディア嬢!────アガレス様の生贄になってください!」
と、懇願してきた。
まさかの直球で要求を伝えてくるターゲットに、私は硬直。
ひたすら、目を白黒させた。
えっ?そんなにハッキリ言ってしまって、いいの?
もっと、こう……スマートに?悪役っぽく?やるべきでは?
交渉や脅迫を予想していた私は、オロオロと視線をさまよわせる。
────と、ここでターゲットはガンガンと床に頭を打ち付け始めた。
「お願いします!生贄を差し出さないと、私の命が……」
「わ、分かりました!分かりましたから!一旦落ち着いてください────学園長!」
耐え切れず声を掛ける私に、ターゲット改めジャスパー・ロニー・アントス学園長は顔を上げた。
エメラルドの瞳にこれでもかというほど涙を溜めている彼は、とてもじゃないが魔王の協力者に見えない。
ただ、あの態度や口ぶりからして四天王アガレスを保護・強化しているのは間違いなく彼だろう。
一瞬、部屋に仕掛けでもあるのかと疑うが……至って普通の応接室である。
『ターゲットからも特に悪意は感じないし……』と戸惑う中、相手は
「お願いします、リディア嬢!────アガレス様の生贄になってください!」
と、懇願してきた。
まさかの直球で要求を伝えてくるターゲットに、私は硬直。
ひたすら、目を白黒させた。
えっ?そんなにハッキリ言ってしまって、いいの?
もっと、こう……スマートに?悪役っぽく?やるべきでは?
交渉や脅迫を予想していた私は、オロオロと視線をさまよわせる。
────と、ここでターゲットはガンガンと床に頭を打ち付け始めた。
「お願いします!生贄を差し出さないと、私の命が……」
「わ、分かりました!分かりましたから!一旦落ち着いてください────学園長!」
耐え切れず声を掛ける私に、ターゲット改めジャスパー・ロニー・アントス学園長は顔を上げた。
エメラルドの瞳にこれでもかというほど涙を溜めている彼は、とてもじゃないが魔王の協力者に見えない。
ただ、あの態度や口ぶりからして四天王アガレスを保護・強化しているのは間違いなく彼だろう。