お人好しの悪役令嬢は悪役になりきれない
斜め後ろで跪く学園長は、『歴代最高峰の魔力量を持っている子供です』と付け加えた。
途端にアガレスはこちらを振り返り、近づいてくる。
その際、雑に切られた黒髪がサラリと揺れた。
「飯」
低く唸るような声でそう言い、アガレスは黄金の瞳に私を映し出す。
と同時に、私の胸ぐらを掴み上げた。
無理やり自分と同じ目線まで持ってくる彼は、無表情なまま口を大きく開ける。
徐々に近づいてくる美しい顔を前に、私は『あともうちょっと……』と思案した。
しっかりアガレスの外見を覚えたら、一度お兄様達のところへ行って……もう一度戻ってくる。皆を連れて。
でも、そのためにはマーキングで転移するための条件を満たさないと。
などと考える中────アガレスの頭に生えた二本のツノが目に入る。
それを合図に、私はアガレスの腕に掴まった。
そして懸垂のように下半身を引き寄せると、アガレスの顎を膝で蹴り上げる。
『ぐふっ……!?』と言って後ろへ仰け反る彼に、私は更にキックをお見舞いした。
その際、手の力が緩んだのか彼は私の胸ぐらから手を離す。
途端にアガレスはこちらを振り返り、近づいてくる。
その際、雑に切られた黒髪がサラリと揺れた。
「飯」
低く唸るような声でそう言い、アガレスは黄金の瞳に私を映し出す。
と同時に、私の胸ぐらを掴み上げた。
無理やり自分と同じ目線まで持ってくる彼は、無表情なまま口を大きく開ける。
徐々に近づいてくる美しい顔を前に、私は『あともうちょっと……』と思案した。
しっかりアガレスの外見を覚えたら、一度お兄様達のところへ行って……もう一度戻ってくる。皆を連れて。
でも、そのためにはマーキングで転移するための条件を満たさないと。
などと考える中────アガレスの頭に生えた二本のツノが目に入る。
それを合図に、私はアガレスの腕に掴まった。
そして懸垂のように下半身を引き寄せると、アガレスの顎を膝で蹴り上げる。
『ぐふっ……!?』と言って後ろへ仰け反る彼に、私は更にキックをお見舞いした。
その際、手の力が緩んだのか彼は私の胸ぐらから手を離す。