お人好しの悪役令嬢は悪役になりきれない
 『ギフトの所有権は持ち主に帰属する』と聞いていたため、戸惑いを覚える。
が、腑に落ちる部分も幾つかあった。

 学園長ともあろうお方が何で魔王に協力していたのか、甚だ疑問だったけど……力を得るためだったのね。
そりゃあ、こんなチート能力をもらったら欲に目が眩むのも頷ける。

 ようやく見えてきた全貌に目を細め、私はギュッと胸元を握り締めた。
溢れ出そうになる不安や焦りを抑えるように。

「学園長、今からでも心を入れ替えてこちら側につく気はありませんか?」

 一縷の望みを懸けて問い掛ける私は、『同じ人間なのだから分かり合えるかもしれない』と期待する。
だが、しかし……

「申し訳ありませんが、お断りですな。アガレス様を無事育て上げたら、更にもう一つギフトを頂けることになっておりますので」

 悩む素振りすら見せずに、学園長は拒絶した。
取り付く島もない彼の様子に、私は内心肩を落とす。
『争わずに済むなら、それに越したことはないと思ったんだけど……』と項垂れ、一つ息を吐いた。
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