お人好しの悪役令嬢は悪役になりきれない
 『まだ捜索開始から、五分も経ってないぞ?』と目を白黒させる中、特待生はパチパチと瞬きを繰り返す。

「ひ、ヒロイン特典……?完全にご都合主義じゃん」

「何を言っているのかさっぱり分からないが、とりあえず感謝する。おかげで早くリディアのところへ行けそうだ」

 真っ暗な通路を見下ろし、僕は微かに笑う。
目下の問題を解決出来て、少し心に余裕が出てきたようだ。

「リエート、先に行け。レーヴェン殿下、光をお願いします。特待生は……残るか?」

「いいえ、私も行きます。囮作戦を言い出した責任、取らせてください」

 間髪容れずに同行を申し出た特待生は、『もし、怪我していたら私の力が必要になりますし』と述べた。
リディアのために動こうとする彼女の姿に、僕はフッと笑みを漏らす。
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