お人好しの悪役令嬢は悪役になりきれない
いつの間にか天井にへばり付いていた黒髪の男を見上げ、僕は『くくくっ……!』と低く笑う。
恐らく、冷気から逃れるため本能的に上へ避難したんだろうが……あまりにも不格好すぎた。
『これなら、楽に倒せそうだな』と考える中、アガレスは
「飯……飯……飯……」
と、譫言のように呟く。
リディアを凝視した状態で。
つまり、奴は僕の妹を食材認定しているのだ。
『こいつ……!』と眉を顰める僕の前で、アガレスはこちらへ手を伸ばす。
標的は言うまでもなく、リディアで……
「あまり調子に乗るな、魔王の犬風情が」
僕は怒りに任せて、氷結魔法を放った。
向かってくる手を、指を、腕を凍らせ、全力でねじ伏せに掛かる。
『僕の妹には、指一本触れさせない』と決意しながら。
「ぐっ……!」
氷で覆われた右腕を見つめ、アガレスは眉を顰めた。
かと思えば────氷を噛み砕く。いや、食べると言った方が正しいかもしれない。
恐らく、冷気から逃れるため本能的に上へ避難したんだろうが……あまりにも不格好すぎた。
『これなら、楽に倒せそうだな』と考える中、アガレスは
「飯……飯……飯……」
と、譫言のように呟く。
リディアを凝視した状態で。
つまり、奴は僕の妹を食材認定しているのだ。
『こいつ……!』と眉を顰める僕の前で、アガレスはこちらへ手を伸ばす。
標的は言うまでもなく、リディアで……
「あまり調子に乗るな、魔王の犬風情が」
僕は怒りに任せて、氷結魔法を放った。
向かってくる手を、指を、腕を凍らせ、全力でねじ伏せに掛かる。
『僕の妹には、指一本触れさせない』と決意しながら。
「ぐっ……!」
氷で覆われた右腕を見つめ、アガレスは眉を顰めた。
かと思えば────氷を噛み砕く。いや、食べると言った方が正しいかもしれない。