お人好しの悪役令嬢は悪役になりきれない
「どけ、ルーナ」
「ダメよ、イヴェール!生まれてきた子に、罪はないわ!」
床に転がる赤子に覆い被さるようにして、母は小さな命を守った。
どんなに怒り狂っていても、父は絶対に自分を傷つけないと信じて。
「確かにリズは人として、やってはいけないことをした!でも、子供は関係ないでしょう!?親の報いを子に受けさせるなんて、おかしいわ!」
「っ……」
母の説得に揺れる父は、一先ず剣を下ろす。
「……じゃあ、これからどうするんだ。その女は身寄りがないだろう?」
言外に『育てる人が居ない』と述べる父に、母は一瞬躊躇う素振りを見せた。
────が、直ぐにこう答える。
「我が家で引き取りましょう」
「なっ……!?」
「本意ではなかったにしろ、貴方の子供なんだから。グレンジャーの名を名乗る資格は、ある筈よ」
いつの間にか泣き止んでいた赤子を抱き上げ、母はタンザナイトの瞳をじっと見つめた。
『父にそっくり』と言わざるを得ない色彩に、複雑な表情を浮かべる。
でも、赤子を見る目は優しく……とても、穏やかだった。
「ダメよ、イヴェール!生まれてきた子に、罪はないわ!」
床に転がる赤子に覆い被さるようにして、母は小さな命を守った。
どんなに怒り狂っていても、父は絶対に自分を傷つけないと信じて。
「確かにリズは人として、やってはいけないことをした!でも、子供は関係ないでしょう!?親の報いを子に受けさせるなんて、おかしいわ!」
「っ……」
母の説得に揺れる父は、一先ず剣を下ろす。
「……じゃあ、これからどうするんだ。その女は身寄りがないだろう?」
言外に『育てる人が居ない』と述べる父に、母は一瞬躊躇う素振りを見せた。
────が、直ぐにこう答える。
「我が家で引き取りましょう」
「なっ……!?」
「本意ではなかったにしろ、貴方の子供なんだから。グレンジャーの名を名乗る資格は、ある筈よ」
いつの間にか泣き止んでいた赤子を抱き上げ、母はタンザナイトの瞳をじっと見つめた。
『父にそっくり』と言わざるを得ない色彩に、複雑な表情を浮かべる。
でも、赤子を見る目は優しく……とても、穏やかだった。