お人好しの悪役令嬢は悪役になりきれない

オール

◇◆◇◆

 あのあと、皇帝陛下が直ぐに騎士団を手配してくれて、アガレスと学園長は連れて行かれた。
もちろん、秘密裏に。
周囲の人々にバレれば怪しまれるし、いらぬ誤解を受けるかもしれないから。
幸い、人目につくような時間帯じゃなかったため誰にも目撃されなかったと思うが。

「……とりあえず一件落着、なのしら?」

 自室のベッドで横になりながら、私はコテリと首を傾げる。
アガレスの境遇を思うと、どうも気が晴れなくて。
とてもじゃないが、眠れそうになかった。

「たった数時間で、平常を取り戻す方が難しいわよね……あれだけの事があったのに」

 今でもまだ残っているアガレスの手の感触や声を思い出し、私は嘆息する。
『本当にこれで良かったんだろうか』という漠然とした不安を抱えて。
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