お人好しの悪役令嬢は悪役になりきれない
「リディア、私だけど……中に入ってもいい?」

「あっ、はい。どうぞ」

 聞き覚えのある声だったため、私は直ぐさま扉を開けた。
すると、そこには案の定ルーシーさんの姿が。
どこか浮かない様子の彼女は『お邪魔するね』と一声掛けてから、中へ足を踏み入れた。
広い室内をグルッと見回し、『貴族用の寮部屋は本当に豪華ね』と零す。

「とりあえず、座ってもいい?」

「もちろんです」

 『お好きなところへどうぞ』と促し、私はお茶を用意する。
と言っても、本当に簡単なものだけど。
『私はハンナのように上手くないから』と苦笑しつつ、ルーシーさんの前にティーカップを置いた。
『ありがとう』と礼を言う彼女に一つ頷き、私は向かい側のソファへ腰掛ける。
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