お人好しの悪役令嬢は悪役になりきれない
「色眼鏡で見てしまうことは……それ自体はきっと悪くないと思いますよ。だって、一種の防衛本能なんですから。問題は自分の知らない一面を見て、それをどう受け止めるか……では、ないでしょうか?」

 本当の意味で相手をちゃんと見れるのは、それこそ無知で警戒心を持たない人だけ。
だから、未来のことをある程度知っているルーシーさんに『フラットな状態で見ろ』というのは些か横暴な気がした。

「ルーシーさんは本来のシナリオと違うリエート卿も、アガレスもきちんと受け入れて下さいました。これだけで、私は充分だと思います」

「でも、私……相手のことを知ろうとしなかった。受け入れた云々は結果論に過ぎないよ……」

「では、これから相手のことを知る努力をしましょう」

 『過ちだと思うのなら、正せばいい』と諭す私に、ルーシーさんは泣き笑いに近い表情を浮かべる。
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