お人好しの悪役令嬢は悪役になりきれない
「私達キャストはどうしましょうか?」

「あー……脚本が出来上がるまで、何も出来ないもんね。私も細かいセリフや演出までは、知らないし」

 前世の知識である程度演劇の様子を知っているルーシーさんは、『一応、教えておこうか?』と問う。
でも、私は断った。
脚本完成まで、楽しみにしておきたくて。
大して重要な場面じゃないなら、知らないままでいたかった。

「じゃあ、個人発表の準備でもする?今のところ、他の班の手伝いは必要なさそうだし」

 細かい分担や段取りについて話し合うクラスメイト達を見つめ、ルーシーさんはそう提案する。
『今のうちにやっておかないと、すぐ忙しくなるよ』と言う彼女に、私はコクリと頷いた。

「そうしましょうか。ところで、個人発表って何をすれば?」

「団体発表と同様、基本自由だよ。と言っても、想像つかないだろうから具体例を話すと、魔道具の制作や論文の発表かな」

 ツンッと人差し指で顎先を(つつ)き、ルーシーさんはおもむろに天井を見上げる。
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