お人好しの悪役令嬢は悪役になりきれない
「もしかして、個人発表について悩んでいる?」

「はい。何を発表すればいいのか、分からなくて……」

「私はもう決まっているんですけどね」

 サラッとそう答えるルーシーさんに、私は思わず『えっ?』と声を漏らした。

「ち、ちなみに何をお作りに……?」

「ブレスレット」

「へっ?」

「だから、ブレスレットだってば」

 『何度も言わせないよ』とでも言うように、ルーシーさんは溜め息を零す。
やれやれと(かぶり)を振る彼女の前で、私はパチパチと瞬きを繰り返した。

「それは、えっと……魔道具のような効果があるブレスレットですか?」

「ううん。ただのアクセサリー」

 先程の話しぶりから、一変……ルーシーさんは確実に埋もれそうな作品を提示する。
別にブレスレットが悪い訳ではないが、他作品の完成度を考えると……どうも、不安だ。
『大丈夫だろうか?』と思案していると、ルーシーさんは呆れたように肩を竦める。
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