お人好しの悪役令嬢は悪役になりきれない
「私は別に目立ちたいとか、才能を買ってほしいとか思ってないからいいの。どうせ、就職先……というか、卒業後の進路は決まっているから」

 『わざわざ頑張る必要がない』と語り、ルーシーさんは腕を組んだ。

「それより、私はあっち(・・・)に集中したいし」

 『あっち』というのは、恐らく────魔王戦の準備、改めアイテム収集のことだろう。
ルーシーさん曰く、学園祭でとある人物が現れ、アイテムを授けてくれるようだから。

「でも、それは本番当日の出来事だろう?準備期間中は普通に楽しんだら、どうだい?」

 『今、出来ることなんてあまりない』と指摘するレーヴェン殿下に、ルーシーさんは顔色を曇らせた。
きっと、彼女自身も分かっているのだろう。全ては当日次第だって。
でも、心情的には居ても立ってもいられないんだと思う。
< 353 / 622 >

この作品をシェア

pagetop