お人好しの悪役令嬢は悪役になりきれない
「他のものと違って、失敗したら二度と手に入らないやつなんです。だから、出来るだけ慎重に事を進めたいというか……」

「なるほどね。じゃあ、応援するよ。でも、あまり根を詰めすぎないようにね。辛くなったら、相談して」

 『出来るだけ力になるから』と申し出るレーヴェン殿下に、ルーシーさんはお礼を言った。
自分の想いや考えを肯定してもらえてホッとしたのか、表情は柔らかい。

 本音を言うと、少し心配だけど……ルーシーさんを尊重しよう。
反対することで、逆に追い詰めてしまう場合もあるから。

「ルーシーさん、私も協力しますので何でも言ってくださいね」

「ありがとう。でも、貴方はまず個人発表で何をするか決めなさい」

「は、はい」

 『他人のことを気遣っている場合?』と叱責され、私はシュンと肩を落とす。
まさに仰る通りだから。
『ぐうの音も出ないとは、このことか』と嘆息する中、ルーシーさんは額に手を当てた。
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