お人好しの悪役令嬢は悪役になりきれない
「貴方って、本当に……もう!」

 苛立たしげに……でも、ちょっと呆れたように眉を顰めると、ルーシーさんはレーヴェン殿下へ目を向ける。

「ところで、レーヴェン殿下は個人発表で何をするか決まっていますか?出来れば、参考にしたいんですけど」

 私のために質問してくれたのか、ルーシーさんは『ほら、ちゃんと聞きなさい』と手を引いた。
レーヴェン殿下の目の前へ誘導する彼女を他所に、彼はクスリと笑う。

「私はギフトの数に関する論文でも、発表しようと思っているよ。ここだけの話、手先はあまり器用じゃなくてね。創作系はちょっと難しいかな?と判断したんだ」

 唇に人差し指を押し当て、レーヴェン殿下は『秘密だよ?』と述べた。
なんだか意外な欠点に、私はもちろんルーシーさんも驚く。
だって、あんなに器用に魔法(植物)を操っていたから。
それに苦手なことなんて、ないと思っていた。
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