お人好しの悪役令嬢は悪役になりきれない
「ふふふっ。分かりました。秘密にします」

「実は私もそれほど得意じゃないので、ちょっと嬉しいです」

「おや?仲間だね」

 ルーシーさんと軽く握手を交わし、レーヴェン殿下は愉快げに目を細める。
『親近感が湧いたよ』と述べる彼を前に、私は頬を緩めた。
友人と友人が仲良くしている場面を見ると、なんだか嬉しくて。
私がフラグを折ってしまったせいで、二人の出会いを無にしてしまったから余計に。
まあ、ルーシーさんは『別にもういい』と言っていたが。

「で、リディアはどうするの?」

 話に一段落ついたのか、ルーシーさんはこちらに視線を向ける。
『別に今すぐ決める必要はないけどさ』と付け足す彼女の前で、私は暫し考え込んだ。

「人前で喋るのはあまり得意じゃないので、出来れば創作系にしたいのですが……これと言って、作りたいものがないんですね」

「じゃあ、一緒にブレスレット作る?」

 悩んでいる私を見兼ねたのか、ルーシーさんは『作り方くらい、教えてあげるよ』と申し出る。
まさかのお誘いに、私は目を輝かせた。

「まあ!よろしいんですか?」

「うん。ただし、材料は持参してね」

 『自分の分しかないから』と補足するルーシーさんに、私は笑顔で首を縦に振る。

「もちろんです」
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