お人好しの悪役令嬢は悪役になりきれない
「あっ、しっかり穴も空いているじゃん。これなら、使える」

 『ビーズと大して手間は変わらない』と言い、ルーシーさんは目を輝かせた。
一番の難点が解決して喜んでいる彼女を前に、私もホッとする。

「ここに来る前に、リエート卿が大急ぎで穴を空けてくれたんですよ」

「じゃあ、尚更こっちを使わないとね」

 『リエートに申し訳ない』と主張し、ルーシーさんは宝石を一旦テーブルの上に戻した。
かと思えば、紫系統の宝石をごっそり持っていく。
ついでに、紺色の宝石も。

「こういうのは早い者勝ちよ」

「ふふっ。はい」

 友人同士の軽いジョークにちょっと憧れていた私は、ついつい笑みを漏らしてしまう。
『じゃあ、私も遠慮なく』と言ってロードクロサイトやサファイア、サンストーン、ダイヤモンドを手に取った。
あと、タンザナイトも。
『この宝石はリディアの瞳とそっくりだから』と考える中、ルーシーさんよりブレスレットの作り方をレクチャーされる。
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