お人好しの悪役令嬢は悪役になりきれない
「申し訳ありませんが、ペンキはもう一度運んできてください。多分、中身残っていませんよね」

「えっ?あっ、本当だ……!じゃなくて、何から何まですみません!」

 ペコペコと頭を下げる男子生徒は、ルーシーさんの手を借りて立ち上がった。
かと思えば、直ぐさま踵を返す。
『まだ倉庫にペンキ、あったっけ!?』と慌てる彼を見送り、私はパチパチと瞬きを繰り返した。

「えっと……先程仰っていた『見れば分かる』って、このことですか?」

「そう」

 間髪容れずに頷いたルーシーさんに、私は困惑を示す。
だって、あまりにも彼女の態度が淡々としているから。
それに、いまいち事情を呑み込めなかった。

「あの……申し訳ありませんが、詳しい説明をお願いしてもいいですか?正直、訳が分からなくて」
< 363 / 622 >

この作品をシェア

pagetop