お人好しの悪役令嬢は悪役になりきれない
「ありがとな。すげぇ嬉しい」

「まあ、せっかくだから貰っておいてやる」

「おいおい、そこは素直に喜べよ」

「はっ?お前のように鼻の下を伸ばせ、と?」

「えっ!?俺、今そんな表情(かお)してんの!?」

 ショックを受けた様子で仰け反り、リエート卿は『嘘だろ!?』と叫んだ。
と同時に、両腕で顔を隠す。

「だらしない顔をリディアに見られたくねぇ……」

「もう手遅れだろ」

「なんっ……!?」

 ギョッとしたように目を剥き、リエート卿は後ずさった。
かと思えば、こちらに背を向けて俯く。
『ガーン』という効果音が聞こえてきそうなほど落ち込んでいる彼を他所に、兄はこちらへ向き直った。

「とりあえず、二人ともその……ありがとう。大事に使う」

「うん、どういたしまして」

「こちらこそ、材料を提供していただきありがとうございました」

 ペコリと頭を下げ、私は再度感謝の意を表した。
ルーシーさんも釣られたようにお辞儀し、お礼を言う。

「それじゃあ、私達はこれで」

「生徒会のお仕事、頑張ってくださいね。また何かお手伝い出来ることがあれば、遠慮なく声を掛けてください」

 『いつでも大歓迎ですから』と言い、私はルーシーさんと共にこの場を後にした。
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