お人好しの悪役令嬢は悪役になりきれない

私の流儀《ルーシー side》

◇◆◇◆

「ヒロイン役を降りてください、ルーシー嬢」

 そう言って、私に詰め寄ってくるのはクラスメイトのアマンダ・エイミー・アボットだった。
取り巻きを使って周囲を固める彼女は、多目的室から出られないよう画策する。
もうすぐ練習の開始時刻だと分かった上で。
つまり、単なる嫌がらせ。

 きっと、レーヴェンのお相手を務めるのが平民の私で不満タラタラなのだろう。
ゲームのアマンダも、同じようなことをしていたから。
一つ違う点を挙げるとすれば、リディアの取り巻きじゃないことくらい。

 『イザベラと同様、改心するかな?と思ったんだけど』と肩を竦め、私は嘆息する。
どうやって、ここから抜け出そうかと思って。
シナリオ通りに行けば、いずれかの攻略対象者に助けられるが……どこまでゲームの知識を信じて、いいのやら。
『最悪、アマンダの思惑通りになるかも……』と危機感を抱いていると、彼女に耳を引っ張られた。
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