お人好しの悪役令嬢は悪役になりきれない
 なる、ほど……リディアの誕生はこの三人にとって、完全に予想外で……不幸の始まりだったのね。
それはなんだか、とても……やるせない。
誰も悪くない分、余計に。

 『リディアも含めて皆いっぱいいっぱいだったんだろうな』と考えつつ、ココアを飲み干す。

「事情は大体、分かりました。お話しいただき、ありがとうございます」

 ペコリと頭を下げて感謝の意を示し、私は真っ直ぐ前を見据えた。

「あの、ここで一つ提案なのですが────」

 そう言って姿勢を正すと、私は大きく深呼吸する。
次のセリフを言う時、声が震えないように。

 ごめんなさい、リディア。貴方の願い、家族(半分)は諦めるしかないみたい。どうか、許して。

 『その分、たくさん友人を作るから』と思いつつ、私はグッと強く手を握り締めた。

「────成人したら、私の籍をグレンジャー公爵家から抜いていただけませんか?」

「「「えっ……?」」」

 公爵夫妻のみならず小公爵まで動揺を示し、大きく瞳を揺らす。
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