お人好しの悪役令嬢は悪役になりきれない

団体発表

 何かを薙ぎ払うような動作で手を動かすレーヴェン殿下に、私はハッとした。
『えっと、セリフセリフ』と焦りつつ、照明をもう一度跳ね飛ばす。

「お、横暴だなんて……貴方に言われる筋合いは、ありません。あれほど、私に優しくしておきながら今更突き放すなんて、あんまりです」

「だからと言って、やっていい事と悪い事があるだろう。さすがに看過出来ない」

 ルーシーさんを背に庇いつつ、レーヴェン殿下は剣を構えた。
かと思えば、威勢よく斬り掛かってくる。
まあ、あくまでフリだが。
キラリと光る模造刀を前に、私は照明を最後にもう一度だけ跳ね飛ばした。
と同時に、斬られる演技をする。

「くっ……」

 水魔法で血糊(ちのり)代わりの赤い液体を出しながら、私は後ろへ倒れた。
ようやくハッキリ見えた照明を前に、私はすかさず氷結魔法を展開する。
そして、天井に固定する(くっつける)形で凍らせた。

 これなら、カーテンコールまで持つ筈。
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