お人好しの悪役令嬢は悪役になりきれない
「えっ?でも、これはアレ(・・)に関係ないし……」

 今回はごくごく個人的なことで……魔王戦と一切関係ないため、相談するのは躊躇われたのだろう。
あくまで利害の一致というか、ビジネスパートナーに近い関係なので遠慮したんだと思う。
『頼っていいのか?』と困惑するルーシーさんを前に、レーヴェン殿下は大きく息を吐いた。

「アレに関係ないから、なんだと言うんだい?私達は友人だろう?友の窮地を救いたいと思うのは、当然じゃないか」

 『私がピンチを見過ごすとでも?』と語気を強め、レーヴェン殿下は小さく(かぶり)を振る。
心外だと言わんばかりに。

「友人の危機に何も出来ないなんて、これほど悲しいことはないよ」

「ご、ごめんなさい」

 極自然に謝罪の言葉を口にするルーシーさんは、バツの悪そうな……でも、心底驚いたような表情を浮かべている。
『友達認定されていたんだ……』と呟き、口元に手を当てた。
恐らく、緩んだ頬を隠すためだろう。
< 396 / 622 >

この作品をシェア

pagetop