お人好しの悪役令嬢は悪役になりきれない
「お兄様、どちらに行かれるのですか?」

「生徒会室」

 サラッと行き先を答える兄に、私は『なるほど』と相槌を打つ。
が、ルーシーさんは納得いかない様子で眉を顰めた。

「それはまた何で……?」

「ここじゃ、ゆっくり話も出来ないから」

 周囲の視線がこちらに向いていることを示し、リエート卿は小さく肩を竦める。
と同時に、目的地へ到着した。
中に人でも居るのか、リエート卿は『入りまーす』と声を掛けてから扉を開ける。
すると、そこには私の両親とアレン小公爵の姿が。

「悪いな、呼びつけて」

「私達も廊下で待っていようかと思ったんだけど、挨拶の列というか人集りが出来てしまって」

「通行の邪魔になりそうだったから、ここに避難してきた」

 『さすがに主役の子供より目立つのはどうかと思うし』と言い、アレン小公爵は苦笑を零す。
『それに話したいこともあったしな』と述べる彼に促され、私達は中へ足を踏み入れた。
一番最後に入ってきた兄が扉を閉め、しっかり施錠までする。

「リディア、結界を張れ」

「あっ、はい」

 言われるがまま結界魔法を展開し、私は『これでいいですか?』と聞く。
すると、兄は間髪容れずに頷いた。
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