お人好しの悪役令嬢は悪役になりきれない
 『私の体』と表記していることから、差出人は本物のリディアみたいだけど……一体、どんなことが書かれているのかしら?

 などと思いつつ、私は封筒の中から便箋を取り出す。
そして、一思いに内容を確認すると────そこには、

『私の体に憑依してしまった方へ
突然このような事態に巻き込んでしまい、ごめんなさい
でも、もう限界なの……全部疲れた
だから、貴方に私の体をあげる
好きに使ってくれて、構わないわ
ただ、一つだけ……可能であれば、色んな人に愛される人へなってほしい
私はどう頑張っても、そういう人になれなかったから……
貴方の第二の人生が、幸福で溢れていることを願うわ
リディア・ルース・グレンジャーより』

 と、とても丁寧な筆跡で綴られていた。
その一文一文、一文字一文字が切なくて……強く胸を締め付けられる。
私はじわりと目に涙を滲ませながら、手紙を抱き締めた。
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