お人好しの悪役令嬢は悪役になりきれない
「あー……確か、個人発表のオークションは一年生の作品から順番に競売に掛けられるんだっけ?」

 あっという間に居なくなってしまったグレンジャー公爵家の面々を前に、アレン小公爵は苦笑する。
その隣で、リエート卿も微妙な表情を浮かべた。

「夫人や公爵はまだ分かるけど、何でニクスまで焦ってんだよ。あいつ、既に同じものを持っているじゃん」

 先日大量にプレゼントしたブレスレットを思い浮かべ、リエート卿はやれやれと(かぶり)を振った。
かと思えば、愉快げに目を細める。

「今回のオークションの最高値は、これで決まりだな」

「なんなら、俺達も便乗するか?」

 まさかの悪ノリに転じたアレン小公爵に、私は思わず肩を震わせた。
だって、グレンジャー公爵家とクライン公爵家が競い合ったら、間違いなくとんでもない値段になるから。
『0が一つ多いどころの騒ぎじゃない……』と青ざめ、私は首を横に振る。
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