お人好しの悪役令嬢は悪役になりきれない
「やっぱりね。貴方ずっと誰かを探している様子だったし、私を見つけたとき凄く嬉しそうだったから」

 社交モードから素に戻ったのか、フィリアはタメ口で話してきた。
表情もさっきより人間味があり、どことなく親近感を覚える。
が、それを喜んでいる暇などなかった。

「じゃ、じゃあどうして声を掛けてくれたんですか……?」

 至極当然の疑問をぶつける私に、フィリアはクスリと笑みを漏らす。

「貴方から、悪意を感じなかったからよ。それにあそこまで一生懸命探されちゃ、放っておけないでしょう?」

 やれやれとでも言うように肩を竦め、フィリアは『子供に弱いのよ、私』と述べた。
かと思えば、スッと真剣な顔付きに変わる。
雰囲気もどこか暗い……というか重くなり、こちらにプレッシャーを掛けてきた。
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