お人好しの悪役令嬢は悪役になりきれない
 私が言うのもなんだけど、一年生の作品は全体的にクオリティ低いからね。
まだ学園に入ったばかり、というのもあって。
そのため、オークションや論文発表に参席するのは保護者くらい。

「そう。なら、そこへ行きましょう」

「分かりました。では、ここからだとオークション会場の方が近いので、論文発表は後回しにしますね」

「ええ」

 『細かいところは任せる』とでも言うように、フィリアは首を縦に振る。
はぐれないようギュッと手を握ってくる彼女に、私はニッコリと微笑んだ。
『こっちです』と言いながら校舎裏を抜け出し、オークション会場である別館へ向かう。

「あっ、着きましたよ」

 サーカスっぽく飾り立てられた建物を指さし、私はチラリと後ろを振り返った。
すると、怪訝そうな表情のフィリアが目に入る。

「確かに人はまばらだけど……なんか凄い盛り上がっているわね」

「目玉商品でも出たのかもしれませんね」

 ゲームでもこういった描写があったため、私は大して気にせず中へ足を踏み入れた。
と同時に、頬を引き攣らせる。
だって、騒がしい理由が分かってしまったから。
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