お人好しの悪役令嬢は悪役になりきれない
 私達が来る前から、殴り合っていたもんね。
思わず大袈裟な反応をしちゃうのも、分かる気がする。

「それにしても、十億か……下世話な話だけど、それだけあれば一生遊んで暮らせるよ、孫の孫の代まで」

「あら、それは凄いわね」

「いや、あくまで人間基準ですからね?」

 素直に感心するフィリアへ、私は慌てて訂正を入れる。
妖精基準で考えられたら、困ると思って。

「それより、これからどうします?論文発表の方へ行きましょうか?」

 金銭感覚も価値観も違うフィリアにオークションは退屈かと思い、移動を提案した。
が、何故か首を横に振られる。

「いいえ、もうちょっとここに残るわ」

「えっ?いや、別にいいですけど……楽しいですか?」

「ええ、とても興味深いわ。物の性能より、作り手に価値を見出すところとか。やっぱり、人間って可愛らしい種族よね」

 知的好奇心を擽られたのか、フィリアはオークションに釘付けである。
恐らく心躍るような楽しさはないものの、新たな学びや気づきを得る面白さはあるのだろう。
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