お人好しの悪役令嬢は悪役になりきれない
「驚きすぎよ」

「いや、だって……!血ですよ!?もし、何かあったら……」

「大袈裟ね、全く」

 呆れたように肩を竦め、フィリアは血の滲む手をギュッと握り締めた。
かと思えば、直ぐに開く。

「ほら、完成よ」

 魔法か何かで固めたのか、フィリアの手には妖精結晶……もとい、血の塊が。

 見た目はルビーと変わらないけど、血なんだよね。
貰っても、大丈夫なの?というか────

「────多くないですか!?」

 形や大きさに差はあれど、私の目に狂いがなければ五個あるように見える。
国宝並みに貴重な妖精結晶が。

「そう?これくらい、普通よ」

「いやいや!そんな筈ないでしょう!」

 ゲームでは、どんなに頑張っても一個しか貰ってなかったもん!

 とは言わずに、受け取りを断固拒否する。
妖精結晶の原材料を知る前なら喜んで貰ったかもしれないが、知った以上無理だ。
フィリアの身を削って作ったと言っても過言ではないソレを、ホイホイ貰う訳にはいかない。
『いや、一個は欲しいけど!』と苦悩する中、フィリアはズイッとこちらに妖精結晶を差し出す。
< 426 / 622 >

この作品をシェア

pagetop