お人好しの悪役令嬢は悪役になりきれない
「はい、完了です」

「ありがとう」

「いえ、こちらこそ。頂いた妖精結晶は、全て大事に使わせてもらいます」

 妖精結晶は消耗系アイテムのため、無闇矢鱈に使うと直ぐになくなる。
なので、きちんと使いどころを見極めなければならなかった。
いそいそと妖精結晶をポケットに仕舞い、私は『大切に保管しなきゃ』と考える。
万が一、盗まれでもしたら大惨事だ。
『一旦、レーヴェンに預けておこうかな?』と悩んでいると、フィリアは満足そうに微笑む。
きっと、無事報酬を受け取ってもらえて安心しているのだろう。

「さて────そろそろ、本当にお別れね」

 すっかり真っ暗になった辺りを見回し、フィリアは『残念』と肩を竦めた。
かと思えば、名残惜しそうに手を離す。
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