お人好しの悪役令嬢は悪役になりきれない
「まあ、三人ともすげぇ嫌がってましたけどね。ここまで来たら、最終日も楽しみたいって」

 『子供みたいに駄々を捏ねていた』と語り、リエート卿は苦笑を零した。
気持ちは嬉しいが、大人組の必死さにちょっと引いてしまったのだろう。

「それより、俺達はこれからどうする?このまま生徒会室に残って仕事や勉強をしていてもいいけど、さすがにちょっと退屈すぎないか?」

 『せっかくの学園祭最終日なのに』と零し、リエート卿は身を起こす。
悩ましげな表情で顎を撫で、重心を後ろに傾けた。
その際、椅子の前足が浮く。

「俺とニクスにとっては最後で、リディアやルーシー、レーヴェン殿下にとっては初めての学園祭。どうせなら、思い出を作っておきたいよな」

「そうは言っても、一体何をすれば……?だって、皆の個人発表はもう終わっちゃったし、クラスの出し物も粗方見ちゃったし」

 テーブルの上で頬杖をつき、ルーシーさんは『あと、なんかやり残したことってあった?』と問う。
でも、皆特にないのかシーンとなった。
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