お人好しの悪役令嬢は悪役になりきれない
外見年齢から察するに、まだ二十代前半くらいよね?
そんな若さで、憑依術を自ら編み出したとは考えにくいわ。
もちろん、物凄い天才であっという間に憑依術を完成させた可能性もあるけど……現実的に考えて、有り得ないわよね。
などと考えていると、猫さんが男性の髪をペタペタ触る。
どうやら、話に飽きてきたようだ。
『何とも気まぐれな猫さんらしい』と少しだけ微笑ましく思う中、ルーシーさんはサッと顔色を変える。
その視線の先には、例の猫さんが……。
「……ねぇ、あれ────翼、じゃない?」
恐る恐るといった様子で猫さんの背中を指さし、ルーシーさんはゴクリと喉を鳴らす。
最悪の可能性を思い浮かべる彼女の横で、私も翼を視認した。
頭巾に隠れていたから、言われるまで気づかなかったわ……。
でも、猫さんの行動は今から考えれば凄く不可解だった。
まるで、男性の言葉を理解しているように振る舞っていたこと。
聖職者のリエート卿やルーシーさんを毛嫌いしていたこと。
突然、三階の窓に現れたこと。
まあ、普通の動物じゃないのは明らかね。
そんな若さで、憑依術を自ら編み出したとは考えにくいわ。
もちろん、物凄い天才であっという間に憑依術を完成させた可能性もあるけど……現実的に考えて、有り得ないわよね。
などと考えていると、猫さんが男性の髪をペタペタ触る。
どうやら、話に飽きてきたようだ。
『何とも気まぐれな猫さんらしい』と少しだけ微笑ましく思う中、ルーシーさんはサッと顔色を変える。
その視線の先には、例の猫さんが……。
「……ねぇ、あれ────翼、じゃない?」
恐る恐るといった様子で猫さんの背中を指さし、ルーシーさんはゴクリと喉を鳴らす。
最悪の可能性を思い浮かべる彼女の横で、私も翼を視認した。
頭巾に隠れていたから、言われるまで気づかなかったわ……。
でも、猫さんの行動は今から考えれば凄く不可解だった。
まるで、男性の言葉を理解しているように振る舞っていたこと。
聖職者のリエート卿やルーシーさんを毛嫌いしていたこと。
突然、三階の窓に現れたこと。
まあ、普通の動物じゃないのは明らかね。