お人好しの悪役令嬢は悪役になりきれない
 どうして、レーヴェン殿下はこんなに落ち着いているのだろう?
普通なら、取り乱してもおかしくないのに。
いや、それよりも────何故、偽物のリディア()を庇ってくれるの?

 予想と全然違う反応に、私は戸惑いを覚えた。
『ルーシーさんならまだしも……』と考えつつ、目元を押さえる。
────と、ここで私は激しい目眩に襲われた。

 あ、れ……?意識が……。

 学園祭の疲労がピークに達したのか、それとも精神的なものか……私は気を失う。
遠くで『リディア!』と叫ぶ兄達の声が聞こえたような気もするが……きっと、気の所為だろう。
だって、私は偽物なのだから。
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