お人好しの悪役令嬢は悪役になりきれない

もう知っている《レーヴェン side》

◇◆◇◆

 おっと、危ない危ない。

 倒れたリディア嬢を咄嗟に抱き止め、私は一つ息を吐く。
傍に立つ三人も同様に、安堵を見せていた。

「レーヴェン殿下、運搬は僕が……」

「いや、俺が……」

「悪いけど、今のニクスとリエートには任せられない。君達は一度、頭を冷やした方がいい。何故、この子が倒れたかは言われなくても分かるだろう?」

 ニクスとリエートの申し出をハッキリ拒絶し、私はリディア嬢をお姫様抱っこする。
『渡さないよ』とでも言うように。

「受け入れる覚悟をしてから、おいで。じゃないと、皆傷つく羽目になる」

「「……はい」」

 誰も幸せにならない結果になるのは薄々気づいているのか、二人は案外素直に頷いた。
普段なら、強硬手段へ出てでもリディア嬢の傍を離れないのに。
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