お人好しの悪役令嬢は悪役になりきれない

君だから《レーヴェン side》

 『魔力を込める隙なんてなかった筈だ』と訝しみ、ルーシー嬢は眉を顰める。
虚言の可能性を捨てきれない彼女の前で、私は小さく肩を竦めた。
自分の信用のなさに、少しばかりショックを受けて。

「率直に答えると、マーキングしたのは君達じゃない」

「じゃあ、どこに……?」

「────校舎裏の植物さ」

 自分の魔力属性とも相性がいいため、私は定期的に校舎裏へ魔力をばら撒いていた。
いつでも、『千里眼』を使える状態にするために。

「ピントを調整すれば対象の周囲の様子も確認出来るから、その特性を活かしたんだよ。まあ、視れるのはせいぜい対象の半径二メートル前後だけどね」

 『そこまで広範囲じゃない』と語る私に、ルーシー嬢は複雑な表情を浮かべる。
『問題はそこじゃない』とでも言いたげだが、一先ず不満を呑み込んだ。
と同時に、納得を示す。
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